「あずまんが大王」コーナー 前書き


 「あずまんが大王」。 あずまきよひこ先生作で、1999年から2002年にかけて「電撃大王」誌に連載。 4コママンガのスタイルを取っていますが、一般的な4コマとはかなり違っています。 多くは4コマだけで完結せず、4コママンガが連続して大きな流れのストーリーを形作っています。 前後を含めて初めて意味が分かるものも多く、またタイトルが落ちになっているという凝ったものもあります。
 「完璧超人」 ちよちゃんや 「暴走女子高生」 ともちゃんをはじめ、良くも悪くも常識から外れたキャラたちが繰り広げるドタバタがこの作品のメインであり面白さですが、その一方、個々のキャラはずいぶん現実を逸脱しているけれども、トータルとしての作品世界は、ごく了解可能な懐かしい学園風景。 その辺りも本作品の大きな魅力ではないでしょうか。
 そういう視点で振り返って見ますと、性格的にはぶっ飛んでいても、一人一人のキャラもまた、やはりノーマルで真面目で親近感ある存在となっています。 必要以上にベタベタ化粧したり、ところかまわず携帯でわめいたり、人に言えないようなことは彼女たちはしません。 もしも仮に、かつてはびこった 「ヤマンバ」 のような妖怪がわずかでも画面に紛れ込んでいたら、これほどまで広い人気は得られなかったかもしれません。
 少なくともレギュラー陣が全員浪人しなかったのも、自分を芸能人か何かとカン違いしている 「カリスマ講師」 などに代表される 「今時の予備校」 に触れることなくすんだという意味もあって、少なくとも私はホッとしました。 やっぱり 「先生」 というのは、今時のわけ分からん 「カリスマ講師」 より、多少ぶっ飛んでいてもゆかり先生にゃも先生キムリン後藤先生の方が、ずっと納得しやすい姿です(ぶっ飛んだ面をも許容するかどうかは別にして ^^;)。 やはり 「あずまんが大王」 という作品全体が、多くの人々が了解しうる懐かしい学園風景なのではないでしょうか。

 現実に連載された時間とほぼ一致した時間が作品世界でも流れており、登場人物たちは連載が進むにつれて進級し、体育祭や修学旅行を経験し、そして卒業していきます。 登場人物たちが、よく知っている友人のように自分と同じ時間を経験し、2002年4月には高校卒業によって連載が終了しました。 それはつまり、彼女らと共有できた時間がこれ以上は増えないことを意味しており、親友ともう二度と会えなくなったようなマジで悲しい気分でしたね〜。 って暗いな〜、スンマセン。 それだけ気に入ってたということであります。
 この辺り、登場人物がいつまでたっても歳をとらないため、作品世界が現実から乖離して同じところを堂々巡りしてしまう 「サザエさん」 や 「ドラえもん」 とは違った良さではないかと思います。

 作品内での 「現実世界」 と、その作品内で登場人物が思い描く 「空想世界」 とをしっかり区別することで、SFやファンタジーではないにもかかわらず、 「空想世界」 をも作品中で 「現実世界」 と対等な存在として共存させることに成功しているのも大きな特徴と思われます。 まぁゆかり先生や噛み猫、マヤーは 「現実世界」 の住人ではあっても、ちょっと現実にはないでしょうが……。
 さて、本作品を 「動くキャラクターグッズ」 とする評もあるそうです。なるほど、良くも悪くも極端なまでに個性的なレギュラー陣と、その登場人物の 「空想世界」 で活躍する何とも不思議なキャラクターたち、そのバラエティに富んだ個性が魅力の一つであることは確かですね。
 はっきり言っちゃって、私はよみさん春日さん(大阪)と榊さんが大好き! 一方、ともゆかりはちょっと近寄りたくないなぁ…… (ファンの方がもしもいたら申し訳ないけど)。 とゆースタンスで書いてますので、どうかご了承ください(^^)。 とは言っても、「いい人」 ちよちゃん、榊さん、春日さん、よみちゃん達に対し、 「ヤなヤツ」 ともやゆかり、このどちらか一方だけなら、これほど面白くはならなかったでしょう。

 さて。 「あずまんが大王」 はSFライブラリでは初の、非SF作品の紹介です。
 だからと言って、無理にSFと比べてああだこうだと言うつもりはありませんが、ちょっと閑話休題。 例えどんなに天才であろうと、10歳の女の子が義務教育をすっとばして高校に入学するなんぞ、今のところ日本が沈没するよりもあるわけないですよね。 これって、なまじっかなSFを上回るものすごい設定ですな。 SFと聞くと 「そんなことあるわけない」 てすぐ言う人がいますが、こういうのはどう思います? (私は無論どちらもオッケーだと思ってます。 それも同じレベルで)

 ええと、要するに2000年から2002年まで、管理人が他のどんな作品よりもいちばん気に入ったから、というのが本作品を取り上げた本当の理由です。 ろくでもねぇ仕事のストレス軽減にいちばん役立ち、またこの作品を通じて、もの書きさんやHP管理人さんやコスプレイヤーさんや、多くの人と話をすることができました。 90年代後半に私を支えてくれたフィクションが、本HPの柱の一つである 「銀河英雄伝説」 であるならば、この一年間ではまさに 「あずまんが大王」 がそれでした。
 2006年、未完の部分があるコーナーなどを部分的に縮小させて頂きましたが、「あずまんが大王」 への感謝の気持ちはいつまでも変わらないつもりです。 この作品がこれからも語り継がれることを、心より願っております。