「あずまんが大王」・食玩コーナー共同企画
   境界領域雑文
   榊さんは食玩ヤマネコの夢を見るか?

 榊さんというのはマンガ 「あずまんが大王」 に登場するカワイイもの好きの女子高生で、特にネコが好きなんだけど、そのネコに嫌われてしまうという可哀想な女の子です。 右のように噛み猫に何度も噛まれたりと散々なのですが、同作品中のいくつかの場面から想像するに、彼女も動物もの食玩に手を出す可能性はかなり高いと思われます (そういうネタやりたかったんだけど、すでに同人誌でありました ^^;)。
 同作品ではイリオモテヤマネコをデフォルメした「マヤー」も登場していますが、ネコ好きな榊さんのこと、旧チョコエッグのツシマヤマネコや 「週間天然記念物」 のイリオモテヤマネコなども手に入れているかもしれません。
 これらの食玩ヤマネコ、当たり前ですがマンガに登場するイリオモテヤマネコよりはやっぱり 「野生動物!」 的。 さて、こうした造形は榊さんのお気に召すでしょうか?

食玩ヤマネコいろいろ。
(左より)
イリオモテヤマネコ (ユージン 「昭和ネコ」 第二集)
イリオモテヤマネコ (海洋堂・小学館 「週間天然記念物」 第1巻)
ツシマヤマネコ
 
(海洋堂 「アニマテイルズ」 第5弾、フルタ製菓 「チョコエッグ」 第5弾)
イリオモテオオヤマネコ (同上シークレット)

 ヤマネコの場合はそれでも結構かわいらしいので、むろんお気に召すでしょう。 ただ、実際のところは 「カワイイもの好き」 「動物好き」 はかなりの部分でオーバーラップするものの、微妙に異なる部分もあります。 アニメで 「榊さんってほんとに動物が好きなんですね」 という言葉に対して 「可愛いものが好きなんだ」 と答えるシーン (アニメ第24回)からも、微妙なニュアンスがうかがいしれます。 「あずまんが大王」 の中では、本来精悍で獰猛な面もあるであろう動物たちも、可愛らしくデフォルメしたりしてうまい具合に整合させているのですが……。
 彼女はクマ好きだし、狼と聞くとしっぽを振ってわんわんと吠えるカワイイ姿を連想してしまうあたり、ちょっと心配になってしまいます。 熊は時に人を襲い、狼も害獣として人間と利害が対立してきた歴史をもっています (むろんそのほとんどは人間側に責任があるのですが……)。 要は動物と向き合った時、現実にはただ 「カワイイカワイイ 」だけでは済まない面も出てくるだろうと思うわけですね。
 また榊さんは獣医になる夢を持っていて、大学も獣医学のあるところを受験しました。
 ただ……これは結構大勢の方が指摘していることですが、彼女のように動物を溺愛してしまうタイプの人は、はたして動物の解剖実習や外科的治療に耐えられるでしょうか?
 それでもやはり榊さんファンとしては、耐えられるようになると信じたいです。 作中に描かれた高校時代はともかく、その後の経験できっと強くなっていくことでしょう。


 さて。 この 「カワイイもの好き」 と 「動物好き」 という図式、実はかの 「チョコエッグ」「チョコQ」 にだぶるのではないでしょうか?
 海洋堂さんとフルタ製菓さんが組んだ初期の 「チョコエッグ」 が登場した時、なんといっても驚いたのは日本固有種帰化動物など、おそらくは 「動物好き」 を意識した (というよりは動物好きな人が選んだ、その結果として動物好きな人が支持したくなるような) 独特のラインナップでした。 アカザとかアオミオカタニシとか、相当動物に詳しくなきゃ知らんよ、てな良い意味でマニアックな種類や、爬虫類や両生類まで取り上げるその姿勢。 動物好きから見れば拍手喝采ものでした。 なにしろ普段は敬遠されがちなヘビやカエルだって、個々のその種類を好きかどうかはともかく (正直言って実物は私も苦手だけど)、彼らも動物の、自然界の一員であることだけは間違いないのですから。
 一方、そうした 「日本の動物」 シリーズとは別に企画された 「ペットシリーズ」。 これを見たとき、 「こりゃ明らかに動物好きよりもカワイイもの好きを狙った企画だな」 と思いました。
 別にそれはそれでいいのです。 どちらが良い、悪いは一切ありません。 むしろ、2つのシリーズによって 「動物好き」 も 「カワイイもの好き」 も両方カバーしようとした姿勢に、幅広さ、柔軟性、たくましさを感じたものです。


 2002年春、海洋堂さんフルタ製菓さんの提携が終了し、同年秋からは両社がそれぞれ別のシリーズを出しています (そこらへんの経緯はkaiyodo.netさんのHPで)。 海洋堂さんタカラさんと組んで、 「チョコQ」 という名でそれまでの路線を維持したシリーズを出す一方、 「チョコエッグ」 という名前を継いだフルタさんの方は 「おもしろ動物編」 ……。 そのラインナップはわりとよく知られた動物種にしぼられ、当時のホビー雑誌の紹介文によれば 「造形も多少かわいらしくなっている」 とのこと。
 ははあ……。 もともとフルタさんはこういう路線がやりたかったのではないでしょうか。 おそらく、リアルで良い意味でマニアックな 「日本の動物」 的ラインナップよりも、いわば 「一般受け」 しそうな 「ペットシリーズ」 的なものをメインにしたかったのではないでしょうか。
 これも一方的な情報の受け売りですが、ある時から突然チョコエッグに加えられたディズニーシリーズ、私も 「何で?」 と首をかしげたものですが、海洋堂さんとは無関係にフルタさんが始めたシリーズなのだそうです。 これも、特定のファン層をしっかりつかむよりも、いろんな嗜好の人をとにかく取り込もうとした戦略だったのでしょう。 さらにアリスシリーズについても両社間で何だかいろいろあるようで……。 そこらへんもkaiyodo.netさんのHP等で紹介されていますので、一度ご覧下さいませ。
 その後のチョコエッグはご存知のように戦闘機シリーズ、メルヘンシリーズ、宇宙シリーズ……もうごった煮状態。 いくら何でもそこまで何でもかんでも……。
「全部ひとまとめにしてー、可愛いメルヘンのー、カッコいい戦闘機みたいな宇宙のタマゴ……」
「もう何いってんだかわかんねーよ」 (あずまんがネタ ^^)


 フルタさんの現チョコエッグに取り上げられた 「おもしろ動物」 (ちょっとよく分からんネーミングですが)、彼らも確かに自然界の一員であり、愛すべき地球の仲間たちです。 ただ、彼らは自然界のごく一部にすぎないということ、 「おもしろい」 というのは人間側から見た一方的な側面に過ぎないということも強調されなければならないでしょう。
 一方、旧チョコエッグからチョコQへと続く 「日本の動物シリーズ」、海洋堂さんが呼ぶところの 「アニマテイルズ」 は、誰も知らないようなマイナーな種類や、一般にはあまり受けのよろしくない爬虫類や両生類も対等に取り上げることにより、 「俺たちだって生きてるんだぞ」 「同じ自然界の一員なんだぞ」 という生き物たちの声を代弁したような気がします。 まぁさすがにヘビが立て続けに3匹出た時はへこみましたがね(笑)


 フルタさんの現チョコエッグ 「おもしろ動物編」 の解説を担当した畑正憲氏がかつて関わったネコの映画、付き合いで観に行きまして、細かいところは忘れましたが 「なんだヤラセじゃん」 と思ってしまった記憶があります。 「物語」 を投影されていて、猫のありのままの姿ではなかったんですね。
 もちろんそれはそれで良いのです。 「そういうお話」 ということさえ分かっていれば。 それが 「ありのままの姿ではない」 ということさえ押さえられていれば。
 またこれまでにTVで放送されてきた動物番組のいくつかも、明らかに 「カワイイもの好き」 をターゲットとし、爬虫類や魚介類を取り上げる時もわざとらしく妙にくずした専門家なんかを登場させて、本質からずれたところで受けようとしていたように思います。 冒頭の 「カワイイもの好き」 と 「動物好き」 のような、「現実の自然」 との微妙なニュアンスのずれを感じてしまうんですよね。
 「カワイイもの好き」 は、それはそれで良いことだし共感も出来ます。 ただ相手が自然や動物の場合に限っては、それはあくまで 「自然界のごく一部」 です。 「カワイイもの」 だけでなく、本当の自然にも目を向けてみてほしいものです。

ちよ 「そう言えばサーベルタイガーもネコ科でしたっけ?」
「これは……噛まれたらシャレになんないぞ」
よみ 「いや、そういう次元じゃ……」


※ 最近 (2003年9月) 聞いたところによると、チョコQの新シリーズには、ある動物番組と提携したシリーズが加わるそうです。 またこれとは別製品で、海洋堂さんとして戦闘機ものにも手を出すんだとか。 フルタさんの現チョコエッグに唐突に加わった宇宙シリーズは海洋堂さんの 「王立科学博物館」 と (コンセプト的に) ほとんど同じだし……。 別にそういう意図はないでしょうが、何だか方向性のオリジナリティが薄れてきてるような気もしないでもないですね。 まっとうな競争は歓迎なんだけど、できればそれぞれの独自性は堅持してほしいものですね。


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