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その3.《黒色槍騎兵》艦隊は何を失敗した?


 アムリッツァ会戦で、ビッテンフェルトの《黒色槍騎兵》艦隊は第13艦隊にかわされたものの、そのまま前進して第8艦隊を攻撃します。そして第8艦隊を壊滅させた後、後ろの第13艦隊を攻撃すべく反転しようとしたところを攻撃されて、壊滅的打撃を受けます。この時《黒色槍騎兵》艦隊が撃ち減らされていなかったら同盟軍は文字通り全滅したかも知れませんし、またヤンは最後の包囲網を突破できなかったでしょう。

 OVAの場合、ヤンが見つめるスクリーン上では、右舷から突っ込んできた《黒色槍騎兵》艦隊に対して第13艦隊は後退し、《黒色槍騎兵》艦隊はその前方を通り過ぎて、第8艦隊へと襲いかかります。
 ちょ、ちょっと……! 銀英伝ワールドでは、敵に側面をさらしたら負けです。これじゃあ、第13艦隊の眼前に側面をさらした《黒色槍騎兵》艦隊は、真横から撃たれ放題じゃんか! (第4次ティアマト会戦で、ラインハルト艦隊は急速回頭して同盟軍に側面をさらしましたが、これは本来そんな危なっかしいことをするわけがないという意表をついた作戦だったはずですね)
 この時点ですでに《黒色槍騎兵》艦隊は壊滅してもよかったような気もしますが……まあ、側面の犠牲を意に介する間もなく《黒色槍騎兵》艦隊が素早かったということでしょうか。
 この後、第8艦隊の《クリシュナ》撃沈をフレデリカが報告する場面で表示されるスクリーン上では、《黒色槍騎兵》艦隊は第13艦隊の背後に位置し、その第13艦隊は、帝国軍の何と二個艦隊と対峙しています。この時点で両艦隊は互いに背を向け合っているわけですね。
 銀英伝の艦隊戦では、艦首を先に敵に向けていることがとっても大事なようです (だからこそ、アスターテで背後をとられた帝国軍は、反転している間に狙われる愚を避け、わざわざ大回りして同盟軍の背後へつこうとしたわけですね)。これはおそらく、艦首主砲が最大火力であるためと思われます。
 《黒色槍騎兵》艦隊は、背後の敵(ヤン艦隊)を攻撃すべく反転しようとして、やられてしまいました。ということは、その時までにヤン艦隊は《黒色槍騎兵》艦隊の方を向いていたことになります。
 う~ん………なんだか、敵が振り返るその時まで、味方がやられるのを後ろでじっと見ていたような光景を想像してしまうのですが、何かやだなあ……。

 でも。でもね、そうとも言い切れないのですよ。第8艦隊を撃破したビッテンフェルトは、こう命じています。

「ようし! 全艦反転、先ほどかわされた第13艦隊を、背後から撃つぞ!」

 背後から……。つまりこの瞬間は、第13艦隊はまだ《黒色槍騎兵》艦隊に背を向けていたことになるのではないでしょうか?
 だとすれば、第13艦隊よりも早く回頭できさえすれば、ビッテンフェルトは決して間違っていなかったのです。第13艦隊は、なぜだか《黒色槍騎兵》艦隊よりもすばやく回頭できたのです。
 いや、まてよ!? この時のヤンの命令は、こうです。

「今だ、全砲門、背後の空域で回頭する黒い艦隊を撃て!」

 背後の空域……。回頭せずとも、全砲門を後ろへ向けて撃てるのでしょうか。そうなると、「艦首を先に敵に向けていることがとっても大事」という本稿の前提が崩れてしまいます。回頭しなきゃならないとしたら、《黒色槍騎兵》艦隊の動きを察知してからでは、ヤン艦隊の方がそれほど有利とも思えません。
 う~ん、分からん。
 そこで拙作では、第13艦隊は前方のさらに別の敵と対峙していたので第8艦隊を救援できなかった、ただし後衛にいた第10艦隊残存部隊にあらかじめ《黒色槍騎兵》艦隊攻撃の準備をさせていた(そっちの方向を向いていた)ため、《黒色槍騎兵》艦隊より先に攻撃を仕掛けることが出来た、と解釈してみました。本当はひとかたまりになって行動する宇宙艦隊の中で、各艦の向きが違うことは多分ありえないんですが、まあお見逃しください……。

 小説版では、各艦隊が具体的にどの方向を向いていたかははっきりしません。そもそも、《黒色槍騎兵》艦隊は最初に第13艦隊を目指したわけではなく、第13艦隊と第8艦隊の間に割り込んできたのです。この時の迎撃がたまたま第8艦隊のほうが弱かったため、ビッテンフェルトは先に第8艦隊を攻撃した、ということのようです。
 ならば第8艦隊を攻撃する《黒色槍騎兵》艦隊のさらに背後から、第13艦隊が攻撃しても良さそうなものですが、なんで出来なかったのでしょう。やっぱり他の帝国艦隊と対峙してたのかな?
 小説によると、 

「救いに出れば、敵の勢いから見て乱戦となり、系統だった指揮などできなくなることは明らかだった。それは自殺行為に等しかった。結局、彼は砲撃を密にするよう命じるしかなかったのである」

とあります。ん? 「砲撃を密にするよう」 って……攻撃してるじゃん。乱戦になるといっても、第8艦隊にかかりっきりになっている《黒色槍騎兵》艦隊の背後から一気に攻撃したらバッチリだと思うんだけどなあ (ただし、そうすると後ろから押された《黒色槍騎兵》艦隊がよけい第8艦隊を踏みつぶしてしまう恐れはありますね)。
 あるいは、その宙域ではもう第8艦隊と《黒色槍騎兵》艦隊がぐちゃぐちゃな乱戦になっていて、一斉砲撃が出来なかったのかもしれません。
 だとしたら……その後で第13艦隊が《黒色槍騎兵》艦隊を攻撃できたのは、もう第8艦隊がほとんど壊滅してあたる心配がなくなったから……??
 う~ん………なんだか、味方が倒れるのを待ってから敵に向かっていくような光景を想像してしまうのですが、それもやだなあ……。

 実際のところ、なんでこの時《黒色槍騎兵》艦隊が大打撃を受けたのか、いまいちはっきりしません。ビッテンフェルトは、

「母艦機能を有するすべての艦はワルキューレを発進させよ。他の艦は長距離砲から短距離砲へ切り換えろ。接近して戦うんだ」

 ん~、第8艦隊に食らいついた《黒色槍騎兵》艦隊は、その第8艦隊を長距離砲で攻撃していたのでしょうか。そして第8艦隊よりも遠いところにいるであろう第13艦隊を攻撃するのに、短距離砲を使おうとしたのでしょうか。
 まあ、反転して第13艦隊に接近した後で短距離砲に切り替え、ワルキューレも出した、というのなら理解できます。その場合ラインハルトの 「ワルキューレを出すのが早すぎた」 というセリフも分かりますね。ただそれだと、なんでビッテンフェルトは接近する前に短距離砲に切り替え、ワルキューレも出したのかが謎です。これではまるで、雨降りに外出するとき、家を出る前に室内で傘を開くようなもんです。結局、切り替えた後で素早く接近する自信があった、ということでしょうか?
 さて、ワルキューレまで投入して短距離戦に持ち込もうとした《黒色槍騎兵》艦隊に対し、ヤンの命令が飛びます。

「敵を引きつけろ。全砲門、連射準備!」

 ……引きつけちゃったら、それは短距離戦に持ち込もうとしたビッテンフェルトと利害が一致するような気が……。 う~ん、「(敵の注意をこちらに)引きつけろ」 といった意味だったのかな?


その4.ポプランの自業自得?
「アムリッツァの謎」