22世紀のY2K − あるいは 「人間そっくり」
(テーマ館第31回テーマ「2000」投稿作品)
22世紀中庸。開発以来百年もの間、ほとんどトラブルもなく絶大な信頼を得ていた
「人間そっくり」 超高性能アンドロイドの一部が、一斉に停止するという事件が発生した。
家事アンドロイドなどはそれほど深刻でもなかったが、宇宙開発基地、核融合施設、反物質センターなどではいくつかの大事故に発展した。
地球連邦は急遽調査に乗り出し、やがて原因が判明した。
「分かりました、古い文献にある2000年問題というやつです」
「おいおい、いい加減にしてくれ。 2世紀も前のプログラムがまだ使用されてたとでも言うのかね?」
「でもその2000年のときも、みんなそんなこと言ってたそうよ」
「まあ聞いてください。 2000年問題ってのは、コンピュータ黎明期、メモリが高価だったため年数を2桁で数えたので、99の次が00となってしまった。そうですよね?」
調査委員たちは一斉に頷いた。
「アンドロイドが開発された100年前、人工頭脳は超高価でした」
「あっ……アンドロイド発明から今年で100年というわけか!」
「まってよ。 いろんな時間管理が狂うならともかく、それだけでは同じように一斉に停止する説明にはならないわ」
「ところがなるんですね。 いいですか、このアンドロイドの謳い文句、
『人間そっくり』 が鍵なんです。 アンドロイドは各職場や家庭で購入されると、あたかも雇われた人間のように歳をとりながらいろんな仕事を学んでいきます。
ところが、年齢が99歳から100歳になったとき、自分の年齢を0歳と認識して、赤ん坊モードにリセットされちまったんですよ!」
「んなアホな……」
「しかしそれだったら、あらかじめ予測されてしかるべきじゃないか!」
「開発企業の言い分によりますとね。 なにしろ
『人間そっくり』 なので、使用年数も人間の平均寿命に合わせて90歳とみなしていたそうです。
それで保障期間外だ、と言い逃れしたいんでしょうが……なにしろ開発当時のメンバーがもういないってことが本当の理由でしょうな。
誰も全容を知らず、上へ上へ継ぎ足していくことでバージョンアップを繰り返し、その根本は誰にも分からなくなっていたのでしょう」
調査委員たちはため息をつき、 『人間そっくり』
アンドロイドに関する資料をもてあそんだ。
「人間も歳をとると子供に返っていくというけど……人間に似すぎるってのも考えものね……」
後 記
今回のしのす様HPテーマ館のお題は 「2000」。 2000といえばやはりY2K問題でしょうか。
といってももう過ぎてしまいましたので、強引に舞台を未来に持っていきました。
ごらんの通り厳密な意味では 「2000」 と関係が薄くなってしまいましたが、大目に見てくださいませ(^^;)。