サマータイムマシン・ブルース − あるいは、時をかけるリモコン(笑) −
2005年8月19日、とある大学のグラウンド。
野球に興じる5人の男子学生と、その様子を撮影する女子学生。
……その5人の男子学生こそ、SFなんて何にも知らないSF研究会のメンバーだった。
写真を撮りまくっていた女子学生は見たまんま、写真部の部員である。
ところが写真部の部室はSF研に乗っ取られ、SF研部室の奥に暗室をかまえて現像しているのだった。
銭湯で汗を流し、帰ってきたはいいが、なぜか部室で大騒ぎが勃発。
騒ぎの中でひっくり返ったコーラがエアコンのリモコンにかかり、この暑い中壊れてしまった!
翌20日、エアコンも動かせず、うだるような暑さの中。
部室の中に奇妙な機械が出現していた。 冗談半分で一人を乗せてみたところ……本当にタイムマシンらしい!
そこで最初に彼らが思いついたのが、昨日に戻って壊れる前のリモコンを取ってくることだった。
だが、過去を変えても大丈夫なのか? SF研の顧問でもある大学助手は、過去を変えることの危険性を指摘する。
かくて、まだ危険性を知らず過去で思い思いにふるまうメンバーと、彼らの変えた過去を元に戻そうとするメンバーとが、昨日と今日を行ったり来たりのドタバタを繰り広げる……。
* * *
最近映画を観る時はいつもパンフレットは買わず、観た結果面白ければ買おう、というようにしています。
で、見終わって。 即買いました、ハイ。
かなり早いうちから思わせぶりな人影とかつじつまの合わない会話とか、将来の伏線かな? というシーンがいっぱいあって、確かに伏線なんだけど、見ている方は正直なところ
「よく分からんな〜」 という感じが強かったです。
で、実は最初のうちはイマイチかな〜? と思ってたのですが……すべての
「よく分からん」 部分はラストまでに見事につじつまが合います。
最初に何が描いてあるのか分からないピースが散らばっていて、それがすべてキレイに組み合わさって完成するパズルのように。
現実の物理的時間 (昨日から今日への一方通行)
と、個人の主観的時間とは本来同じはずですが、ここにタイムマシンが登場すると、後者が一方通行ではなくなります。
すると物理的時間にしたがってストーリーが進行している間は
「よく分からん」 ことになるのですが、同じ場面を主観的時間に沿って改めて描き直されると、見事につじつまが合うわけですね。
この辺りこそ、時間SFの醍醐味の一つですね。
時間SFは数あれど、時間旅行の目的がリモコンだったり、昨日と今日を行ったり来たりという時間的距離の短さから、永野寿彦氏は映画パンフレットの
「タイムマシンと映画」 という一文で 「そのスケール感の小ささにおいては、おそらく世界一に違いない」
なんて書かれています。 でも上記のようにSF的整合性は見事で、厚みは十分にあると感じます。
同じ文章には 「タイムマシン移動回数ナント、18回。
(中略) これまたおそらく世界一記録」 とも書かれてます。
ふむふむ、そう言えば時間SFを見ても航時回数って数えたことなかったなぁ。
回数においてこれに対抗できそうな作品、どなたかご存じありません?(^^)
「タイムマシンと映画」 は本作品を 「アホらしくも切ない、タイムトラブルな夏の日を描いた青春映画」
である、と締めくくっています。 タイムマシンはともかく、こうしたドタバタって学園生活にはありがちですよね。
昔懐かしき学園生活を舞台にしたドタバタ、つまり
「あずまんが」 的なノリも、この映画がワタクシ的に気に入った一因かも知れません。
SF研顧問のホセ、学園青春ものでは先生って大抵脇役だし、単なる説明役かと思いきや……ラストで良い味出してくれます。
中盤で名画座のおやじに 「おまえ、悲しいな」
とか言われながら、最後にはああいう決心をするところなど、青春って子供だけのもんじゃないな、などと思ってみたり(笑)
主人公の少年少女たちはもちろん、ホセも含めてそうした未来へとつながる余韻をみれば
− 甲本がラストにぶっ飛んだことを訊いて笑わせますが、これもある意味、立派な未来への道標の一つでしょう
− 「スケール感の小ささにおいては、おそらく世界一」
などということは、決してないのではないでしょうか。
写真部の伊藤唯は、過去を変えようとしたり戻そうとしても、結局最初から決まっていたことだったのではないか、といったことを言っていました。
これだけで時間SFに関するコンテンツが丸々一個できそうなテーマですが、ホセの
「決められた枠に滑り込む」 といったセリフは、例えそうであっても努力の余地、し甲斐はあると言っているような気がします。
甲本君もぜひ枠に滑り込んでください(笑)
まぁ理屈は置いといても、相当に笑えます。
日常に疲れた方にはお勧めです (笑)。 そろそろ公開終了のようですが、機会があればぜひどうぞ。
インターネットで上映時間を調べていると、エアコンのリモコンを持っていくと割引だとか。
で、持っていくと……1000円で観れました♪ やはりこの作品のキーワードはリモコンなわけでして……
それにしても、リモコンってあんなに長持ちするんだろうか……という点は置いといて。
本作品で最大のタイムトラベラーは、やはりそのリモコンではないだろうか……
2005.09.26