その1.出国編

 すでに皆さまご存じのように、私め2006年4月に何とか結婚しまして、新婚旅行はオーストラリアに行ってきました。
 なぜオーストラリアかと言いますと……ごくごく単純に、あまり遠くなくていろんな動物や自然が見れる場所、ということでオーストラリアが良い、というのが私の希望でした。 一方彼女は卒業旅行でも行ったことがあるけど、その時の印象がとても良かったのでもう一回行きたい、ということで運良く希望が一致。
 では、オーストラリアの中でもどこへ行くか?
 彼女と私の希望、どちらも満たせる場所ということでケアンズ (かの有名なグレートバリアリーフが近い)、ゴールドコースト (大きな野鳥園といくつかのテーマパークがあるらしい)、シドニー (やっぱりオペラハウスは押さえたい) の3ヶ所をまわる、8日間の旅 (といっても前後1日は移動日なので事実上は6日) に決定したのでした。
 もっとも、3ヶ所を2日ずつというなかなかの強行日程。 おまけにそれぞれが数百キロから1000キロ以上離れているので、移動日は午前3時や4時に起き、しかも移動だけ旅行会社のガイドさんにお世話になって、現地では好きなところに勝手に行くという 「放し飼い」 ツアーだったりで、まー普通は新婚旅行でそんなことせんじゃろ、というムチャな旅だったわけですが……(爆)

 さて、旅行会社で旅行の申し込みができたのは、2006年に入ってから。 日程表や保険関係などもらった資料の中に、オレンジ色のカードが挟まれていました。 入国カード (Incoming passenger card) というやつで、名前や国籍、検疫関係などの質問について飛行機を降りるまでに記入し、入国審査時に見せるものだそうな。 実は、旅行の準備中これで結構悩まされることとなりました。 どんなカードかというと、ネットで調べると割と簡単に見つかるので、よろしければ検索してみてください。
 もともとのカードは英語だけど、日本語や韓国語で書かれたものもあるとか。 実際、旅行会社の資料に挟まれていたカードは日本語でした。 ふーん、外国に行く時はこういうものを書くのか。 国内旅行とはやっぱり違うなー、と眺めていると、カード表面の右側にある質問が目に留まりました。
 税関や検疫関係の質問で、「下記の物品をオーストラリアに持ち込もうとしていますか?」 とあり、その下に薬品や食品など多岐にわたる品物がずらずらと書いてあります。
 要するに荷物にこれらの品物がある時は 「Yes」 にチェックをすべし、というわけだが……はて、Yesにチェックしたらその先はどうなるのだろうか? 申告すればそれでOKなのか、それとも没収もあり得るなら、始めから持っていかなければいいんだけど。 たぶん物に拠るんだろうけど、では具体的にどういうものがダメなのか……。
 彼女は前にもオーストラリアに行ったことがあるので、当時どうだったか訊いてみると、全員がすべて 「No」 にした (ので、「Yes」 だったらどうなるか分からない) という。おいおい……。
 ガイドブックやネットでざっと調べた結果、どうも食品に関してはかなり厳しいらしい。 そういえばだいぶ昔、カップ麺のたぐいは肉類が入ってるからダメだったとTVで見たし、箒のようなものまでダメだった (穂先みたいのがついているから) とネットにもありました。 しからば、と持っていこうかどうしようか考えていた菓子類などはやめることに決定。
 問題は頭痛薬などの薬品類。 くだんの質問の第一行には、こう書かれています。

「禁止または規制されている物。医薬品、ステロイド、銃砲、武器、不法な薬物」

 どこの一般旅行者が武器 (weapons) なんぞ持ち込むねん、と突っ込みたくもなるけど、そこはおいといて。
 余談ですが、普段飲み慣れた市販薬がある場合は、持っていった方がいいですよー。 海外で同等の薬が手に入る保証はないし、同じ薬品名でも有効成分の分量とかが同じとは限らないし、国によって薬の事情は様々ですから……。
 さてこの質問にある 「医薬品 (medicines) 」、普通の風邪薬や頭痛薬といった市販薬も入るのだろうか? もちろん普通一般には入る。 ただこのように書かれると、そうした市販薬と、武器や違法薬物などを並列に扱うものだろうか?? と、どうも抵抗を感じます。はたして医薬品ならばすべて 「禁止もしくは規制されている物」 となるのか? 医薬品の中でも 「禁止もしくは規制されている物」 が問題、という解釈もできそうな気もするし……。
 彼女に訊いてみると、「薬は持ってかない」 とつれない。
 旅行会社に訊いてみると、「オーストラリアは観光大国なんだから、そんなに厳しくないんじゃない?」 といたって気楽なお返事。
 うーむ、とネットで調べてみても、食品類の持ち込みは厳しいぞ、とあちこちにあるのに、医薬品に触れたページはほとんどありません。 やがて見付けたのが、オーストラリア関税部のHP
 ずばり 「医薬品の持ち込み」 という箇所があるので読んでみると……
「市販薬、処方箋共に医薬品を持ち込む場合は、入国時に必ず申告をすること」
 ハイ、分かりました。 「Yes」 にチェックします。
「市販薬を持ち込む場合:未開封の状態、または個別包装でも裏に成分が書かれているなど市販薬であることが分かる状態で申告して下さい」
 ……げげっ。 それは厳しいなぁ。
 結局、外箱があるものは外箱に入れ (この時点で気付いたのですが、外箱には効用などが英語で書かれているものもありました。 これは使える)、ないものはしょうがないのでチャック付きポリ袋に入れまして。 その上で、cold medicine (風邪薬) とかdigestive (胃腸薬) といった英語名を調べておいて、それを外箱や袋にマジックで書いておきました。 下手な発音より、訊かれたらこの英単語を指させばいいハズ。
 ということで市販薬は決着してもう一点、質問の9番目にはこうあります。

「土、またはたとえばスポーツ用品、靴などのように土の付着した物品」

 それより前の彼女との相談で、カジュアルなシューズと、レストラン等にも行けるようにちょっとフォーマルっぽい靴を用意することにしていました。 片方は履いていけばいいけど、もう片方は荷物の中に入れることになります。 もしも申告品を審査時に見せなければならないとすると、機内預けじゃなくて手荷物にしないとダメなのだろうか?? しかし靴はちょっと大きいよなぁ……。
 で。 彼女に一通り説明して 「どうする?」 と訊いてみると、機内預けに入れる、とのこと。 自分だけ引っかかると彼女を待たせるし心細いけど、道連れができるならそれでも良いだろう、と自分も機内に預けるバッグに入れることにしました。

 そして2006年4月9日、出国当日。
 結婚式が終わってすぐ関西国際空港に移動するというかなり無茶なスケジュールでしたが、何とか無事に搭乗手続きを済ませ (とはいっても、飛行機に搭乗するまでに列車に乗って移動せなあかんとは! こりゃ一人で来たら分かりません。 しかも列車をおりてだいぶ後戻りしてるし……なんかムダなような。 はっきり言って、後から振り返ると関空のこの構造はオーストラリアのどの空港よりも分かりにくかったデス)、あとは午後8時30分の離陸を待つばかり……の筈が、なかなか離陸しない。 はて? と思っているとやがて、冷蔵庫の電気系統の故障だかなんだかで機内食を交換するため、1時間ほど遅れるとな!! 機内食はないはずだから、ファーストクラス用か!? などと憤慨してましたが、実は自分らにも機内食がありました。

 4月10日午前5時 (現地時間、以下同様)、遅れながらも無事ケアンズ国際空港に着陸。 機外に出ると、とたんに襲いかかる蒸し暑さ。 これでほんとに秋かよ……。
 さていよいよ問題の入国審査ですが。 入国カードを一瞥した審査官、日本語 (!) で 「クスリ?」と お訊きになる。そこで薬の袋を差し出して 「イエス、コールドメディスン、アンド・ソー・オン」 とか何とかたどたどしく口にするも、ちらとご覧になって、早うお行きなさい、という感じ。 いささか拍子抜けして荷物受け取りへ。
 あ、そう言えば靴のことは訊かれなかったなぁ、と考えながら機内預けのバッグを受け取ると、さらにもう一ヶ所関門が。 ここで入国カードを渡すようなので、いよいよ靴のことを訊かれるか? と思ってたら、深く訊かれることなく通過。 かくていろいろ悩んだ割にはあっさりと、生まれて初めて外国の地を踏んだのでした。


注意
 市販薬の持ち込みについては分かりやすい情報が少なく悩まされたため、ありのままの経験を書いていますが、決して意外とすんなり審査が通ったことを強調したいわけではありません。 やはり念のため、外箱があるものは持参したり英語名を調べておくことを、強くお勧めします。 すんなり通るから例えば入国カードはいいかげんに書いて良い、とかいうわけでは決してありません。 「Yes」 にチェックしたからこそすんなり通れたのかも知れませんし、同じ 「Yes」 でもどの項目かによって対応が異なるものと思われます (ちなみにいくつかのサイトによれば、「Yes」 にチェックしておけば万が一の場合でも該当品没収だけで済むそうですが、「No」 にチェックしていて見つかった場合は、罰金や裁判にまでなった例もあるんだとか)。 またこうした対応はいつも同様とは限りませんし、自分の時は違ったぞ、ということがあるかも知れませんが、ご了承下さい。