その1.各艦隊及び提督の運命は?


 拙作では、この点は主にOVA版を参考にさせていただきました。小説版の方は、この点が比較的はっきりしないのですよ。
 この点について考えるとき、小説版で一つ、注目すべき箇所があります。

「勇戦して戦死した二人の艦隊司令官、ウランフ中将とボロディン中将は、二階級特進して元帥の称号を受けた」

 戦死した場合必ず二階級特進できるのかどうか知らないのですが、この書き方だと、戦死した提督はこの二人だけで、後は生還したか、降伏したか、行方不明か、という風に読めますね。
 一方OVA版では、グリーンヒル大将がロボス元帥にこう言っています。

「すでに第3、第7、第12艦隊が通信途絶、第9艦隊のアル・サレム中将は重傷、第10艦隊のウランフ中将は戦死、両艦隊とも半数以上を失ったとの報告が入っています。第5、第8艦隊はかろうじて敵の追撃を振り切った模様ですが、やはり3割近い犠牲を出しております。ヤン中将の第13艦隊は健在ですが、ドヴェルグ星域で足止めを受け、すでに8時間が経過しました。
 我々は、敵の策にのせられたのです。今は一刻も早く、イゼルローンまで撤退させるべきです。閣下、ご決断を!」

 でもロボス元帥は 「全軍アムリッツァ恒星系に集結!」 と無茶な命令を出してしまいます。ここで退いときゃいいのにねえ。さすがにグリーンヒル大将の顔も怒ってます。

 さてOVA版では、アムリッツァ集結時点でまとまった艦隊が存続しているのは、このように第5、第8、第13艦隊の3個艦隊だけという惨憺たる有様になっています。
 小説版で、第10艦隊の残存艦艇は第13艦隊の指揮下に入っていますが、その他の艦隊はどうなったのでしょう?

 第3艦隊は、OVA版では惑星レージング付近でルッツ艦隊と交戦、旗艦 《ク・ホリン》 は僚艦と小惑星に挟まれて撃沈、ルフェーブル提督は戦死しています。上記のように艦隊としての通信も途絶しており、ほとんど壊滅したのでしょう。
 一方、小説版ではまったく語られていません。ルフェーブル提督も元帥になってないのだから、数はともかく、提督指揮で一部だけでもアムリッツァまでは来れたのではないでしょうか。

 第7艦隊はドヴェルグ星域でキルヒアイス艦隊と衝突しますが、その後がOVAと小説とで異なっています。
 OVAでは降伏しており、アムリッツァへ集結はできません。小説の場合は 「敗走」 なので、せめて何割かは集結したでしょう。ホーウッド提督も元帥になってないので、戦死はしていないのでは…。

 第8艦隊はアムリッツァに集結するものの、ビッテンフェルト艦隊によって壊滅する点では大きな食い違いはないのですが、アップルトン提督の生死が謎です。
 OVAでは旗艦 《クリシュナ》 が撃沈され、アップルトン提督は戦死します。
 小説では、旗艦や提督の運命は触れられていません。元帥になっていないので生還したとも思われますが、「エンサイクロペディア」では戦死となっています。では一体なぜ、元帥にならなかったのでしょうか!?
 第12艦隊のボロディン提督の場合、艦隊がほぼ全滅するまで虚しい抗戦を続け(つまりそれだけ将兵を死なせ)、あげくに自分は自決しています。
 一方アップルトン提督は、自分はともかく部下は退艦させています。
 それでもボロディン提督だけ特進したのは、「世間は部下に苦労させる司令官ほど偉いと思うのさ」というヤンの言葉どおりなのでしょうか。やだやだ。
 私だったらボロディン提督ではなくアップルトン提督を二階級特進させるぞ。

 第9艦隊は旗艦の被弾だけがクローズアップされていて、艦隊全体がどうなったのかは分かりません。ただ、この時指揮を引き継いだモートン少将が後に誉められているので、きっと何割かは集結したはずです。

 第12艦隊の場合、OVA版でも小説版でも旗艦以下わずか8隻にまで撃ち減らされ、降伏しています。しかし1万隻以上の艦隊が8隻って、半端な戦いじゃないぞ……。降伏するにしても、ここまで粘りすぎたらもはや手遅れだと思うのですが。それまでに死んでいった将兵が哀れ。
 それにしても、第12艦隊は「降伏」したのですが、ボロディン提督は「戦死」(ほんとは自殺ですが)したと同盟軍はどうやって知ったのでしょう?

 第5、第10、第13艦隊は、OVAと小説とで大きな違いは見られません。

 さて、結局アムリッツァに集結し得た艦隊はどのくらいなのでしょうか? 以上の推測をまとめてみましょう。

OVA 提督指揮 :第5、第8、第13艦隊
提督不在 :第9、第10艦隊
集結せず :第3、第7、第12艦隊
     
小説版 提督指揮 :第3、第5、第7、第8、第13艦隊
提督不在 :第9、第10艦隊
集結せず :第12艦隊

 結局異なるのは第3、第7艦隊で、もちろん小説版でも最終的に降伏した可能性もあり、そうなればOVAと同じになります。しかし特にそれを示す証拠もないので、降伏せず、元帥になってないので戦死もしなかったと仮定すると、小説版では、負傷したアル・サレム提督も含めて6人の提督が集結したわけです。なんだ、結構いるじゃん。その割には、みんなどこにも登場しないんですよ……。
 OVA版の場合は、最終的に第3、第8、第10、第12艦隊の提督が戦死しています。8個艦隊の半分! あと一人は負傷、一人は降伏して、無事に帰ってきた提督は二人だけ! ……半端じゃないぜ。後に第14、第15艦隊が創設されたとき、新しい人材が登用されるのも頷けます。
 だけど、小説版ではみんなどうなっちゃったんでしょうね。やっぱり降伏したのでしょうか。それとも、戦死したんだけど元帥にはしてもらえなかったのでしょうか……??


その2.第13艦隊は何をしたのか?
「アムリッツァの謎」