はじめに − 「戦艦メムノーン伝」 前書き
この「戦艦メムノーン伝」は、無謀にも「銀河英雄伝説」(田中芳樹先生原作)の舞台を拝借した、Owl共和国初の長編・非オリジナルSFです。「銀河英雄伝説」(略して銀英伝)の原作にほぼ忠実に沿った上で、オリジナルのエピソードやキャラクターを付け加えたりしております。そのため「銀英伝」をご存知であることを前提にした背景や伏線などもありますが、この点何卒ご了承くださいませ。できますれば、この機に「銀英伝」原作をご覧になることをお勧めいたします。なお、拙文「Introduction - 銀河英雄伝説とは」で「銀英伝」を紹介しておりますので、ご参考までに。ここで言う「原作」は、小説(全10巻プラス外伝数編)と全110話のOVAの双方を含んでいます。どちらかというとOVAの方をよく参考としましたので、OVAも合わせてご覧いただけると、より楽しめるかと存じます。「銀英伝」にはマンガ版もありますが、こちらは読んでおりませんのでご了承ください。
タイトルの戦艦 《メムノーン》 は原作には一切登場しませんが、「銀河英雄伝説 DATABOOK メカニック&声優大事典」(徳間書店,1999年)で設定されている戦艦です。
同書によると、《パトロクロス》 や 《盤古》
などの旗艦はいずれもアキレウス級というクラスの戦艦であり、OVAで登場したほかにも全部で二十数隻が建造された、ということになっています。
《メムノーン》 もこのアキレウス級戦艦の一隻として紹介されており、宇宙暦791年から796年までの経歴が簡単に紹介されています。
そこで、本来は脇役の (というより登場場面すらなかった)
《メムノーン》 を主人公に、勝手に創作したのが、この「戦艦メムノーン伝」です。
史実 (つまり原作ね) には、結構忠実なつもりです。原則として史実と矛盾する内容は入れない予定ですので、パロディや外伝とはまた違うとは思いますが……(こういうのは何と呼べばいいんでしょう?)。
まあ、無名のキャラクターから見た歴史、といったところでしょうか? 「銀河英雄伝説
DATABOOK メカニック&声優大事典」での設定がどれほど意味があるのか、異論もあると思います。まあ、ひとつのきっかけだったと思っていただければ幸いです。
一般にSFの醍醐味とは、「現実」という制限の中で、「科学」という道具を使ってどれほど想像の羽を広げられるか、だと思います。
言ってみれば、ここでは「銀河英雄伝説」という枠の中で、「DATABOOK」という道具を使って、どれほど新しい空想を付け加えられるか、を試してみたつもりです。
1999年5月に書き始めた当初は、アムリッツァ会戦の辺り(現在の第1部)だけで終わるつもりでスタートしました。が、銀英伝原作をいろいろ読み返したり観なおしたりしていうるちに、アムリッツァ以降の展開にもいろいろアイデアが浮かび、またここで作ったキャラクターに愛着がわいてきたこともあります。当然ながら拙作の中では銀英伝原作の登場人物と、私が勝手に考えたキャラが混在しています。原作に登場したキャラクターについては、「新訂エンサイクロペディア銀河英雄伝説」(らいとすたっふ監修、徳間書店、1997年)にとっても詳しく網羅されています(この本があるから拙作ができたようなもんです。深く感謝)。
オリジナルキャラも含めて登場人物や伏線などが第1部からずっと連続しておりますので、ぜひ第1部から順番にご覧いただくことをお勧めいたします。
当初の予定より長引きそうな感じですが、戦艦
《メムノーン》 がどこまで飛び続けられるか、気ままな航海にお付き合いくださいませ。