ドラえもんの2002年


 「ドラえもん」 コミック第16巻 「立派なパパになるぞ!」。
 酔っ払って帰ってきた父親に、部屋にカラーテレビが欲しいと言ってみたものの怒られ、大人は自分勝手だと憤慨するのび太。 自分はそんな大人にならないぞ、と25年後の自身の父親ぶりを見に行くのだが……。
 さて、のび太は未来の息子ノビスケの部屋で日記を見つけます。 よく見ると、その表紙には 「2002」 の文字が! そう、この未来はまさしく2002年なのです!


 先日実家に帰った時、小さい頃に読んだ 「ドラえもん」 コミックで面白そうな話、気に入った話を切り離してとっておいたものを偶然 「発掘」 しました。
 そしてこの 「立派なパパになるぞ!」 が2002年を舞台としていたことに気付き、それを何と2002年に読み返すことになるとは、ホント驚きました。 何だかかつて流行った、地中に埋めたタイムカプセルを掘り当てたような気分でしたね。
 拙文「そして2001年」では、 「あの 『ドラえもん』 でも、のび太がタイムマシンで未来の自分へ会いに行く回がありました。 作品の発表年代を考えると、その未来とはまさに今我々がこうしている現代ということになります。 ドラえもんの中で描かれた未来の街に比べれば、ほとんど変わってませんね(笑)」 と書いたのですが……発表年代を考えるもなにも、そのものずばり年が書いてあったとは……。
 さてさて、「立派なパパになるぞ!」 の2002年は、登場する風景からして、もっとずっと未来のような風景ですが、もう少し詳しく見てみると……

「『睡眠圧縮剤』をのめば、一時間寝ただけで十時間分の……」
「無重力シアターで、プラネッツの深夜コンサートがあるんだよ」
「パパに『人工衛星組み立てセット』をねだったが、断られた」

 無重力というのが宣伝用誇張文句じゃなくて文字通りの無重力だったら、すごい技術革新ですね。 その後でノビスケが空飛ぶバイクのようなものに乗って(小学生ぐらいに見えるけど免許はいらないの!?)、12階のベランダから(!)出かけていくのだから、重力制御も実現できてたりして……。
 それはともかく 「睡眠圧縮剤」。 欲しいぞ、これ。 心の底から……。


 そして25年後の自分はというと、かつての父親のように酔っ払って帰ってきます。 悲しいかな、これがオトナの世界ってぇもんですねぇ(笑)。 ショックを受け、未来の自分を問い詰めますが、そりゃあ本来同じ自分。 逆に、

「今の自分を振り返ってみろ。 たいした努力もしないで、ある日突然えらい人になれると思う?」

なんて言われます。

「じゃあいつになったら立派な大人になれるの?」
「さあね……。ひょっとして一生、今のままかもね」

 しかし未来ののび太はこう続けます。

「少しずつでもましにはなってきてるから。 それに……しずちゃんは素晴らしい女性だ。 ノビスケも、生意気だけど可愛いやつだ。 この二人のためだけにでも、ぼくは頑張ろうと思うんだよ」

 のび太! あんた、そんなフマジメな子供時代で、よくそんな幸せな大人になれたな! うらやましすぎるぞ、ちくしょうめ!
 で、「やれる範囲で頑張るぞ!」 とちょいとトーンダウンしながらも、それなりの決意を持って自分の時代へと帰ってくるのび太でした。
 こういう話って下手くそな教科書よりはよっぽどいいかもしれませんね。
 しかしのび太ならずとも、仮に10年前、20年前の自分が現れたとしたら、何言われても文句言えないなあ……。 10年後、20年後の自分なんて恐ろしくてとても見れません。
 ところで、この2002年にはドラえもんはどうしてるのかな……?

本文は1980年ごろに管理人が手にしていたコミックスを元にしております。 したがって最新版や再収録版などでは 「2002」 の文字をはじめ変更されている可能性もあるかもしれませんが、確認しておりませんのでご了承ください。 もしも変更点がありましたら、お教えいただけると幸いです。

2002.06.03